T 幸せに輝いた数日 ひとケタの年のある日に、父と近くのお寺の縁日にお参りに行きました。父はとてもおっかない人で、普通の父親だったら絶対に怒らないような小さなことで、道中必ず何か雷を落とすため、どこかへ「一緒に行こう」と誘われるとゾ〜ッしたものでしたが行かないと言っても怒られるので、仕方なくいつも、悲壮な決意と共に付いていったのです。 けれどもその日は、父はいつにもない上機嫌で、屋台で売っていた十字架のペンダントを私に買ってくれました。ちなみに、ご存知の方も多いと思いますが、私は女から男へ性転換した者なので、その頃はまだ「娘」だと思われていたのです。またそういうわけで、その頃はすでに女の子らしい物にまるで興味がなかったのですけれども、なぜか宗教的な物や事柄がとても好きだったので、イエス様が浮き彫りになったその金メッキのペンダントは、たちまちお気に入りになりました。 首から下げて歩くことはしませんでした。プラスチックのおもちゃのブロックのうち、白いものだけを選んで祭壇のような形を作り、そこに飾っておいたのです(神聖な物は白いのだ、というアタマが幼稚園を出たかでないかのうちにあったことには、我ながら不思議な気がします)。 ただ数日後、その「祭壇」を仏壇の横に置いておいた時、「わざわざ仏様と神様をケンカさせるなんて!」と親に怒られてからは、そのペンダントがどこに行ったか記憶がないのです。当時我が家はある仏教系の信仰をしており、私もお寺さんの幼稚園に通ったので、捨てられてしまったかもわかりません。 チビッコながら私は不満でした。ケンカさせようなどという思いは毛頭なかったのです。あがめられる方同士、同じ場所から仲良く見守ってほしい、と思ったのです。今でも私は、私のこの時の考え方はアッパレだと思っています。出口王仁三郎が言うところの「万教同根」、全ての宗教は同じ根から出づ、という思想に、素朴ながら通じていると考えられます。ケンカするような神様仏様は根源的な神仏ではなく、高級ではない神霊にしか過ぎません。 ところが「スター・ウォーズ」シリーズで、"選ばれし者"だったアナキン・スカイウォーカーが悪に走ってダース・ベーダーになったごとく、「万教同根」を標榜していた小学生の私も、ある日を境に悪魔に頼るようになりました。文字通り、悪魔に頼ろうとしたのです。ふと手にした子ども向けの『悪魔全書』に夢中になり、黒魔術をして悪魔を呼び出し、自分の魂を捧げる代わりに、望みを叶えてもらおうとしたのでした。 |
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